展覧会
公募作品展 第25回OURギャラリー展
2023.10.22

今年で25回目を迎えた“私たちの作品展”ことOURギャラリー展。

5・7・5調の17文字の詩とイラストをかいたはがきサイズの作品を募集したところ、今年も複数名での合作作品や学校等からの団体応募があり、老若男女問わず幅広い世代から個性溢れる作品の数々が集まりました。

今年のテーマは「記念」。
2023年は香美市立やなせたかし記念館・詩とメルヘン絵本館が開館25周年、雑誌『詩とメルヘン』創刊50周年、絵本『あんぱんまん』誕生50周年の記念の年であり、やなせたかし没後10の節目の年でもあることから、「記念(きねん)」を今回のテーマとしました。
応募者それぞれが思い浮かべた「記念」の作品870点すべてを展示しています。

 

【会 場】 香美市立やなせたかし記念館・別館 入場無料

【会 期】 2023年11月11日(土) ~ 2023年12月17日(日)

 

審査員総評


詩村あかね(詩人・朗読家)

力作揃いで選出するのに大変迷いました。選外作品も、ユーモアのセンスが光るもの、ペーソスの効いた言葉や画力がみごとなもの、文学的な香りのするものまで実に多彩で、楽しみながら審査させて頂きました。「記念」というテーマでしたが、審査を進めるうちに「生きていれば、毎日が記念なんだ」という気づきが私の中に生まれ、目から鱗がぽろぽろ落ちました。投稿者のご年齢も幅広く、それぞれの記念に込められた想いは展示会で多くの方に共感して頂けると思います。たくさんの素晴らしい作品に出会えて嬉しい!ありがとうございました。

 

雨宮尚子(イラストレーター)

今年もたくさんのご応募ありがとうございました。みなさんのかけがえのない「記念」に共感したり感心したり笑ったりおどろかされたり…。ほんとうにすてきな作品ばかりで楽しくも悩ましい審査会でした。

 

くさか里樹(漫画家)

それぞれの思いと個性が咲き誇る花畑の真ん中にいるような、心躍る審査でした。選外の中にも大好きな作品がたくさんあります。全作品が展示される「OURギャラリー展」を多くの方に見ていただきたいです。

 

おかもとあつし(漫画家・紙芝居作家)

今年も、全国から多くの皆さんから、たくさんの「記念」をテーマにした作品をお送りいただきました。「生活の中にある小さな記念」や、「家族の絆を感じる記念」、「長い時間の中から生まれた記念」、「自然の中にあった記念」などなど、いろいろな記念があるのだと感心しつつ、そして楽しみながら審査をさせていただきました。ハガキ大の絵と17文字の詩の小さな作品ですが、表現できる世界は無限の可能性があるように思います。これからも、親しみやすい公募展として、多くの皆さまに気軽にご参加いただけますよう願っております。

 

受賞作品・選評


大賞
 大阪府 池田 美有 さん

 選評

何と言っても「だいにゅーす!」の初句が効いています。そして歯を手に持って見せる少女の自慢げで嬉しそうな表情に強く惹かれました。抜けた乳歯は大人へ一歩近づいた証。紛れもない記念品です。成長することへの純粋な喜びに出会い、私まで幸せな気持ちになりました(詩村)

「だいにゅーす!」の次にくるドーンと大きな笑顔、最高です。明るいイエローの背景にうれしい気持ちがあふれて見えました。(雨宮)

まるで目の前にいて語りかけてくるようです。この小さな大ニュースはみんなが共感できて自然と笑顔になれますね。意味合いごとに文字色を変えたのも、よく考えているな、と思いました。(くさか)

「だいにゅーす!」から始まる詩が良いですね。我が家でも、小学生の孫が、学校であったことや登下校であったことを、よく話してくれます。子どもたちにとって、毎日が感動の連続なのだろうと思います。ましてや、自分の体の一部分がはずれるなんて、まさに「だいにゅーす!」。歯を差し出す、女の子の所作や表情もすばらしいです。(おかもと)


OURギャラリー賞
 広島県 叶原 満里菜 さん

 選評

頬を染めたおばあちゃんの笑顔がやわらかで、内面の幸福感がよく表現されていると思いました。三句目の「わしもやで」がお連れ合いの言葉になっているのも、掛け合い漫才のようで夫婦の年輪を感じます。文字の配置もよく、トマトと麦わら帽子のリボンの赤が絶妙なスパイスになっていて、構図も配色も素晴らしい作品でした。(詩村)

「わしもやで」と突然別のひとの言葉が入ってくる展開が印象にのこりました。リズムも心地よく、トマトをさしだす笑顔と受けとる大きな手に思わずほっこりしました。(雨宮)

老夫婦の掛け合いの言葉が共に生きた人生を表していて素晴らしい。農作業でも指輪を外さないのは若者の感性ですが、そんなご夫婦もいらっしゃるでしょう。老いても乙女の顔をしたおばあちゃんにすごく惹かれます。(くさか)

登場人物の年齢の感じが良く出ており、詩と絵のバランスがよくとれた作品だと思いました。この作品では、「指輪」の見せ方が大きなポイントになるところですが――、左からおじいさんの手だけが出てきて、指輪を大きく見せ、「わしもやで」と突っ込みを入れるアイデアは、まるで上方漫才を見ているようで、テンポが心地良いです。詩のレイアウトもすばらしいです。(おかもと)


 兵庫県 北原 佳代子 さん

 選評

ポップな色使い、人物の表情や動きもユーモラスで見る人を明るい気分にしてくれる作品です。バッグを持って立っている女の子は美容院から帰宅したばかりなのでしょう。パーマが成功したのか失敗だったのかを気にも留めない満面の笑みは誇らしさの表れ。そんな少女の天真爛漫さが愉快です。変身願望を満たしてくれた「初パーマ」の日。そんな日が自分にもあったことを懐かしく思い出しました。(詩村)

家族がそろって箸を落とすような奇抜なパーマに本人がご満悦なところがなんともかわいくおもしろい。個人的にはけっこう似合っていると思います!(雨宮)

初パーマは大決断の大冒険。家族が箸を落としても本人的には大成功、と言う明るさが画面全体から溢れています。多色使いなのにバランスがとてもいい。(くさか)

我が家でも、子どもたちの「初パーマ」「初茶髪」「初ピアス」に驚かされました。若い人が一度は通る道なのでしょうね。ご家族の驚く顔がいいですね。“家族団らん”の絵も、何かなつかしい感じがするのですが、この作品の「初パーマ」の娘さんは、もしや作者ご自身の体験談なのかな?(おかもと)


 千葉県 五島 唯衣 さん

 選評

メガネをかけたことで、ぼんやりとしていたそれまでの世界が突然、鮮明な色彩と輪郭を持つ。その驚きと感動を「記念」と捉えた着眼点にまず感心しました。そして「白二百色 理解した」の二句三句が文字としても音としても非常に効果的。作者は絵を学んでいる学生さんかな…と背景に想像が膨らみ、主体の存在がイキイキとしてきます。作者の視界を一緒に見た気持ちになれる構図も面白かったです。(詩村)

私もすごく目が悪いのでこの感覚よくわかります。メガネをかけた瞬間に世界ってこんなに色彩豊かだったんだ!って思うんですよね。白二百色、まさに。(雨宮)

メガネ族なら誰もが大納得。白は200色もあるんですね。クリアに見えることを色の微妙な違いで表現したのは見事としか言いようがありません。絵にするのはすごく難しいテーマですが、大胆に挑戦しています。(くさか)

「初メガネ」で見えた景色から、その色の深さが「白二百色」に結びついた表現が光っていました。後日、「白二百色」はアンミカさんが発信した言葉だということを知りましたが、「初メガネ」に引用して「白二百色」と結びつけたセンスはすばらしいと感じました。空の雲を連想させるような絵も、詩とマッチしており、とても良いと思いました。(おかもと)

 

 高知県 中村 達志 さん

 選評

筆致などをじっくり拝見すると、実際に右利きの作者が骨折によって左手で描いたものではないか…と想像されます。そうだとしたら更に見事です!モノクロの効果で、人物の絵に専心する表情、ギブスをした痛々しい右手、左手の筋肉の緊張までが感じられ、芸術性があり、大変魅力的な作品です。「苦心する」という意味の「骨を折る」が掛詞的に使われているのも印象的でした。(詩村あかね)

言葉遊びのようでいて、しっかりと状況や大変さが伝わってきました。すごい。この絵を描くときにも左手で骨を折ったのかな?と思わせるラフな鉛筆のラインが好きです。(雨宮)

白黒のバランスや人物の断ち切りの加減も程よくて、技術を感じます。骨折はおおごとなのに、ふとダジャレを呟く飄々としたキャラクター性にニヤリとしました。(くさか)

骨折たいへんですね。きっと右手が“きき手”なんでしょう。普段はサポート役の左手と、突然の立場逆転!「骨折」と、苦労するの意味の「骨を折る」を掛けたのはおみごとです!ユーモアのセンスを感じます。もしかして、この作品は、その左手で描かれたのではないですか?どうかお大事に。(おかもと)

 

 愛知県 村上 真保 さん

 選評

葉擦れの音が聞こえるような爽やかな作品。羽化したばかりの蝶は透明感があり、蛹に掴まった細い脚が儚げです。「きみのはね」「あとすこし」などの平仮名使いで、命の躍動感だけでなく、広い世界に羽ばたく前の、震えるような緊張感や怯えまでが伝わってきました。蝶が「風つかむまで」を見届けたい、応援したいという気持ちになります。文字の配色など細部にもこだわりが感じられる美しい作品でした。(詩村)

「あとすこし」の瞬間を「記念」として切りとったところに魅力を感じます。淡く美しい水彩、今にもふわりと風にのって新しい世界へ飛び立ちそう(雨宮)

細くて少しよれた羽が少しの不安と大きな未来への希望が現れていて、蝶にとってもそれを立ち会った風や人やとっても忘れられない記念の瞬間ですね。(くさか)

〝卵から幼虫、サナギ、そして成虫へと、みごとに変身する蝶。生命の神秘の一場面を、まだ若いアオムシ君の視点から描いているようで、面白い作品です。そして、絵の中を風が吹いるように感じられる、さわやかな作品だと思いました。(おかもと)

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