今年で26回目を迎えた“私たちの作品展”ことOURギャラリー展。
5・7・5調の17文字の詩とイラストをかいたはがきサイズの作品を募集したところ、今年も複数名での合作作品や学校等からの団体応募があり、老若男女問わず幅広い世代から個性溢れる作品の数々が集まりました。
今年のテーマは「ドキドキ」。
やなせたかし・妻の暢さん夫婦がモデルとなっているNHK 2025年度前期連続テレビ小説『あんぱん』が来年春に待ち構えています。さらに、それに合わせて当館が大幅にリニューアルされることもあり、新しいことが始まる時の期待感などで胸が高鳴ることから「ドキドキ」を今回のテーマとしました。
応募者それぞれが思い浮かべた「ドキドキ」の作品484点すべてを展示しています。
【会 場】 香美市立図書館かみーる内「つながるーむ」 入場無料
【会 期】 2024年11月9日(土) ~ 2024年11月24日(日)
審査員総評
雨宮尚子(イラストレーター)
今年もたくさんのご応募ありがとうございました。はがきに描かれたイラストや詩に共感してドキドキ、どの作品を選んだらよいかとドキドキ、話し合いが白熱してドキドキ...と、テーマ通りドキドキづくしの審査会でした。
審査員それぞれに、心にのこりつつ惜しくも選にもれてしまった一枚があり、選ぶことのむずかしさをあらためて感じました。
くさか里樹(漫画家)
私たちの周りにドキドキすることってこんなにもたくさんあるんだな、と改めて気付かされるくらい、いろんな視点から描かれた作品が揃い、本当に見応えのある審査でした。
小松申尚(絵本作家)
「ドキドキ」というテーマのもとに集まった作品は本当に多彩の一言。17文字の言葉と、ハガキサイズの絵だけで、こんなにたくさんの表現ができるんだと感心しながら、楽しく審査することができました。奥が深いのにチャレンジしやすい大会だと思うので、ぜひ次回以降も、個性が爆発するような作品で楽しませてほしいなと思います。
正木秀尚(漫画家)
全体的にレベルの高い作品が多く、楽しく選びながら心苦しい思いもしました。技術的に優れた作品や感性の鋭い作品など多彩な資質と向き合えて自分もドキドキとワクワクを味わいました。
おかもとあつし(漫画家・紙芝居作家)
このたびは、たくさんのご応募をいただきありがとうございました。好きな人と「ドキドキ」、期待で「ドキドキ」、緊張で「ドキドキ」、怖いことで「ドキドキ」など、いろいろな「ドキドキ」に出会えた今年の審査会でした。
気になったのは、「絵と詩の関係性に少し気を付けると、もっと良くなるのに」と思えた作品が多かったように感じました。絵が上手に描けているのに、あえて詩に「ドキドキ」と書き入れてしまったり、詩の文字を大きく書き過ぎて、絵を見えにくくしてしまっていたり…、アイデアを練る中で、絵と詩(文字)のバランスや見せ方に少し気を付けるだけで、もっと素敵な作品ができると思います。これからも、楽しい作品のご応募をお待ちしています!
受賞作品・選評
大賞
岩手県 似内 亜美 さん
選評
何を撮っているのかな~と、審査中みんなかわるがわる絵の中のレンズをのぞき込みました。興味をそそられる詩、すべてを見せない大胆な構図が光っています。(雨宮)
画面いっぱいに断ち切った絵から、心臓の音が聞こえそうなほどの緊迫感を感じました。被写体は何なのか、状況を明かさないとは、なんとも大胆。いっぱい想像が膨らみました。(くさか)
その一瞬、逃すことのできないワンチャンスを、レンズ越しに狙っている。息をつめ、指は震え、胸の鼓動さえ聞こえてくるみたい。大胆にグッと寄った構図には緊張感があって、その外側に色々な物語があるような、想像力を刺激される作品でした。(小松)
一目見て世界観が心に飛びこんでくる魅力的な作品です。見れば見るほどこれがどういう状況なのか頭の中でイメージが広がります。この構図を選んだことがすごく成功していると思います。(正木)
薄暗いが、黄色い光から考えると市街地なのか?カメラには、望遠レンズと思われるレンズがついており、少し離れた位置から捉えた被写体は何だ?カメラを構える人物は、男性?女性?ひたいに見える汗が緊張感を高めていく。
意味深そうな"詩"と相まって、何かサスペンスドラマの中のワンシーンのようなミステリアスな作品。みごとに引き込まれてしまった。(おかもと)
OURギャラリー賞
東京都 五味 心陽 さん
選評
たくさんの目が見つめるなかで手をあげるのって勇気がいりますよね。ドキドキをこらえてピンとあげた手、かっこいいです。いいとこしっかり見えています!(雨宮)
力いっぱい挙げた手が目に飛び込んできます。ごちゃごちゃせず、とても見やすくて、色の塗り方にも勢いがあって気持ちが伝わってきました。(くさか)
その小さな胸の中に抱いている純粋な気持ちを、直球で表現してくれていて、おじさんも胸を打たれました。そうだよね、いいとこ見せたいよね!手をピンっと上げているのが、すごくかっこいい。(小松)
この子は正解を知っているのか知らないのか、どちらでもやっぱりドキドキしますよね。挙げた右手がすごく力強くてはりきってる気持ちが伝わってきます。(正木)
"さんかんび"にママの前で、思いっきり元気に手を上げている姿が、実に良く描けています。たぶんママの方も、ドキドキして見られていたのではなかったのかな?(おかもと)
高知県 筒井 音花 さん
選評
絵を見ているこちらまで緊張してしまうほど迫力あるジャガイモ達です。落ち着くためのおまじないがかえってドキドキを引きよせている?逆転の発想がおもしろいですね。(雨宮)
原稿用紙に言葉をうまく配置しましたね。やたらリアルで美味しそうなジャガイモが怖いくらい大きくて、その存在感に魅せられました。(くさか)
古典的なあがり症防止テクニックですが、実際に顔がジャガイモになっているのが超シュール。自己催眠が効きすぎたのか、おかしなゾーンに入って逆に落ち着けなくなったという。(小松)
画力と構図が抜群です。そのおかげでジャガイモに迫力があって「これホントに落ち着くの?」と思わず笑ってしまいました。(正木)
大勢の人の前に立つときは、緊張をしないように「人をジャガイモと思えばいい」などと昔から言うけど、こんなに近くまでジャガイモたちが迫ってくるなんて想定外かも…。ホラー映画のような作品で面白いですね。原稿用紙に詩を書きこんだアイデアもすばらしい!!(おかもと)
福岡県 岩本 しんじ さん
選評
こんな場面に一度は身をおいてみたいようなみたくないような...。細部までとてもていねいに描かれていて、天国と地獄のはざまのドキドキが伝わってきました。結果が気になる~。(雨宮)
隙間なく丁寧に描かれていて、完成度の高さに驚きます。言葉の配置も工夫されていて面白いです。もう、ドッキドキ。(くさか)
受賞作の中でも、実際に起きた時のドキドキ度はMAX。指が震えるどころか、毛が逆立ち、瞳孔は開いて、心臓が飛び出るだろうなと思います。ケバケバしいくらいに鮮やかな色彩が、欲望うず巻く宝くじ抽選会の様子をよく表しているなと感じました。(小松)
このドキドキは今まで経験したことのないドキドキですね。この気持ちを味わうにはやっぱり宝くじを買わないと始まらない。今度買ってみます。(正木)
なかなか、ここまで数字がそろうこと自体が奇跡!ここまで揃うと、指の震えも止まらないでしょうね。密かな楽しみで宝くじを買って入る私としては、「ドキドキ」を実感としてとらえることができた作品でした。ああ、一度でいいからこんな気持ち味わってみたい。(おかもと)
愛知県 土橋 莉子 さん
選評
私もこんなとき心臓がとびだすくらいドキドキします。よく見ると2匹のほかに下にもう1匹...。恐怖の場面をかわいらしく仕上げたところがおみごと。文字をふくめた全体的なデザイン力も高い評価となりました。(雨宮)
こわ~いGのことなのに、すご~く素敵に描く見事さ。フォントも絵にマッチしていて絵本の1ページのようです。(くさか)
顔を合わせずに暮らせたら、お互いにとって幸せなのに。本作品はえらくほのぼのと描かれていて、彼らもとても幸せそう。でも一方で、手前には殺虫剤とハエタタキが描かれているという何とも言えない感じ。(小松)
かわいくてユニークな絵柄に高い力量を感じました。詩のフォントも好きです。細かいところまでていねいに描かれていて、見てて楽しくなります。この絵で絵本が読んでみたいです。(正木)
「G」が可愛くコミカルに描かれていますが、よく見るとスプレー殺虫剤の左下には、「G」の触覚の先端が!それから推定すると、「G」たちのサイズは、見たとおりで相当デカイと思われます。ここは無理に退治しようなどと思わずに、日本語も話せて、お食事のマナーも良さそうなので、ぜひお友達になってもらいましょう!「ドキドキ」の中にも、愛💛を感じる作品でした。(おかもと)
群馬県 赤澤 圭子 さん
選評
審査員がつぎつぎに自身のヘビ体験を語ってしまうほど高い共感を得ました。ヘビのうろこや草なども細かくていねいに描かれ、やさしいタッチのなかにリアリティも感じました。(雨宮)
覚えがある人はもちろん、ない人もきっとドキっとしますね。優しい色で丁寧に塗られていて、申し分ない出来栄えです。(くさか)
田舎道に横たわる細長い何か。「え、あれってもしかして……。違うと思いたいけど、でもやっぱり……へ、へ、へ、へび?」あえて頭としっぽを描かない構図が、出し抜けにへびと遭遇した時の驚きをよく表していて、うまいなーと思いました。(小松)
僕にも覚えのある光景です。ぎくっとするシチュエーションを優しくも確かな絵柄で描き切っていて、ドキドキと同時に心温まる作品に仕上がっていると思います。(正木)
実は、私も中学生くらいのころ、同じような体験をしました。大人の腕のくらいの「丸太かな?」と思ったものが、突然動き出して草むらに消えていきました。心臓が激しく動いていたのを覚えています。絵も詩も美しく、バランス良く構成されている作品だと思いました。特に、胴体の一部だけしか描かなかったことで、蛇の大きさを見る人に想像させたところがすばらしいです。(おかもと)