展覧会
公募作品展 第24回OURギャラリー展
2022.10.31

今年で24回目を迎えた“私たちの作品展”ことOURギャラリー展。

5・7・5調の17文字の詩とイラストをかいたはがきサイズの作品を募集したところ、今年も複数名での合作作品や学校等からの団体応募があり、老若男女問わず幅広い世代から個性溢れる作品の数々が集まりました。

今年のテーマは「平和」。
ロシアのウクライナ侵攻により、我々が普段当たり前のように感じていた「平和」という概念に衝撃が走りました。また、長引く新型コロナウィルスの影響は、常に我々の日常生活という「平和」をおびやかす存在でもあります。そんな心休まらない時代だからこそ、「平和」を今回のテーマとしました。
応募者それぞれが思い浮かべた「平和」の作品640点を展示しています。

 

【会 場】 香美市立やなせたかし記念館・別館 入場無料

【会 期】 2022年11月12日(土) ~ 2023年1月9日(月・祝)

 

審査員総評


おとどちゃん(桂浜水族館公式マスコットキャラクター)

二次審査からの参加だったので、またの機会があれば、ぜひとも一次審査から参加したいと思えるほど、どの作品も見応えがあり、それぞれの作者がさまざまな視点と感性で「平和」をテーマに思いを紡いでいるのが感慨深かった。難しいテーマに果敢に挑み、限られた空間の中で自己表現をする。受賞作品こそ決まったが、正しい答えも間違った答えもないと思う。これはゴールではなく、スタートだ。この展覧会を機に皆が「平和」とはなにかを考え、言葉を交わし、互いの思いをあたためることができれば、私たちは「平和」以上の世界にたどり着くことができるかもしれない。

 

雨宮尚子(イラストレーター)

今年もさまざまな視点からたくさんの作品が集まりました。どれもすばらしく、一枚一枚に感心したり納得したり考えさせられたり…選ぶことのむつかしさをあらためて感じました。賞にもれてしまったなかにも心を動かされる作品がありました。

 

くさか里樹(漫画家)

たくさんの平和への願いに胸打たれました。美しいもの、温かいもの、キレのあるもの、など、画力の高さに目を見張りました。落としたくない作品ばかりで、展示会で入選作以外の作品も是非見ていただきたいです!

 

おかもとあつし(漫画家・紙芝居作家)

今回は、全国から640通もの作品が寄せられました。近年にはないくらいのたくさんのご応募をいただきました。作品の内容も、戦争がらみの「平和」を題材にしたものや、日常生活そのものの「平和」を題材にしたもの、宇宙的な視点から見た「平和」を描いたものなど、様々なアイデアを生かした作品が寄せられました。それぞれが感じる「平和」への思いや表現に、深く考えさせられました。残念ながら、入賞がかなわなかった作品も多くありましたが、今後もチャレンジしてください。 

 

受賞作品・選評


大賞
 大阪府 西尾 昌代 さん

 選評

一見乱雑に描かれた子どものらくがきのようだが、ひとつとして同じものはない。親には子がいて、子には親がいる。描かれた生きものたちにはそれぞれの物語があり、感情もある。ポップな世界観の中には狂気も存在し、添えられた純粋かつ痛烈な言葉のメッセージ性の高さにも魅せられた。見る者に二枚目の存在を感じさせ、次のシーンを考えさせたり、結末を想像させる面白い作品。限られた空間を最大限に使い、作品として一枚におさめつつも、物語としては完結させていないところがまさに大賞にふさわしい作品。(おとどちゃん)

全生物が見つめるなかで人間はどうするのか…。長い物語のようなイラストとやわらかく語りかける詩の組み合わせが絶妙です。よく見ると不思議なシーンなどもあり、ついつい見入ってしまいます。(雨宮)

作品中央の、おばあさんと赤ちゃんを抱いた女性に銃を突き付けている兵士らしき人物の行動に、生き物たち(親子のペア)が一斉に注目しているのが、何とも映画を見ているようで、ストーリー性が感じられました。また、詩の内容と配置も、センスの良さを感じました。(おかもと)

銃を構える兵士の違和感がすごい。人を信じ、平和を信じるたくさんの命の声が戦争という闇を包み込んだ未来を見た思いです。1ページだけの素敵な絵本、ですね!(くさか)

 

OURギャラリー賞
 福岡県 岩本 しんじ さん

 選評

私たちはいったい何をもってして「平和」といい、それは誰のため、なんの上に成り立っているのかを、今一度深く考えさせられる一作。「平和」をテーマに表現する中で、この問題提起のし方は、いい意味でとても挑戦的だと思った。作者の感性の高さもさることながら、いま現実に世界で起きていることも絡めて訴えかける度胸が素晴らしい。では、他のテーマを取り扱う時は、どのような痛快な表現をするのかをぜひ見てみたいと思う逸材だ。(おとど)

ミサイルによって保たれる平和も平和なのだろうか…と考えさせられます。草原と無機質なミサイルの対比に「これでいいのか」と問われた気がしました。(雨宮)

自国の軍備を増強することによって、敵対する相手国に「あの国を攻撃しても利益にならない」と思わせて、戦争を回避しようという考え方が「抑止力」です。その「抑止力」に頼って〝こんな平和〟にたどり着いた某国を、ブラックユーモアで一刀両断、お見事!(おかもと)

武力バランスで形作る仮初の平和。こんな知恵しか出んのか〜い、と突っ込んでるみたい。鉛色の武器が一個一個丁寧に描かれていて、逆説的な強いメッセージを感じます。(くさか)

 

 千葉県 稲葉 美奈子 さん

 選評

何気ない日常こそがかけがえのないものであること、平穏な日常の一コマに込められた特別感。夜、気軽に外に出ることができ、24時間営業しているコンビニがあること、アイスを買って幸せを感じられることの尊さが表現されている。たった15文字で私たちがいかに平和な日々を生きているかを考えさせられる。夜の表現に黒色一色ではなく青色を使用しているところが、黄色のあたたかみを際立たせていて良い。(おとど)

ちょっとコンビニへ行けるのって平和だからこそですよね。夜の青と灯の黄色そして車の赤。配色がとてもきれいです。(雨宮)

〝平和な日常〟を、「夏の夜に、コンビニへアイスを買いに行く」という行動に置き換え、そしてイラストも、照明が明るい「夜のコンビニ」が表現されていて、静寂な中にも、どこか安心感が漂う作品に仕上がっているように思います。(おかもと)

平和な日常を描いているのに不安に駆られます。強い青と黄色が印象的。コンビニエンスな文明社会も夜出歩ける安全も、きちんと意識しないといけないって思わされます。(くさか)


 兵庫県 tama&maki さん

 選評

「平和」というテーマからは少し離れている作品ではあるが、水族館で働いているということもあってか、個人的に一番心に響いた作品。以前「いのちの重さは同じなのに、私たちは、エサとなる魚の死に対してなぜ心が痛まないのでしょうか」と問われたことを思い出した。ここに描かれているいのちも、きっとそれぞれに終わりを迎えるのだろう。いのちをいただいて生きる上で、どんな時も、そのことから目を背けずにいたい。(おとど)

詩の内容がいろいろに解釈できそうなので少しむつかしい作品かなと思いますが、他にない着眼点で審査員の支持を得ました。(雨宮)

母豚と4頭の子豚、私は「家畜」の豚をイメージしてしまいました。この後の豚たちの生き方を考えると、家畜である限り、自ら道を選ぶことは困難だと思われます。では、この詩の「いのちをみつめ えらびたい」は、飼い主の人間の思いなのでしょうか、さてまた運命を決める神様の御心なのか・・・。今までとは違った、生き物の〝命〟について考えさせられた作品でした。(おかもと)

お母さん豚と子豚の体温と柔らかさがまんま伝わってくる、素晴らしい画力です。メッセージもストレートでわかりやすいところがとてもいいと思います。(くさか)


 福岡県 古賀 真由美 さん

 選評

「まさにその通りだ」と言わざるを得ないところが憎い一作。誰もが一度は思うであろうことを形にしたところに、してやられたと感じた。結局はそうなのである。この皮肉をユーモラスに表現する技量の高さ、また、作者もニンゲンでありながら宇宙人になりきり、作中では、地球での出来事を完全に他人事として取り扱っているところも憎い。宇宙人もビールを飲むのか。問題提起の中にもクスっと笑えるような抜け感があって非常に面白い作品だと思った。(おとど)

「ほんとにそうかも…」と素直に納得してしまいました。詩もイラストもストレートでわかりやすい。宇宙人もビールでくつろいだりして我々とかわらないのがいいですね!(雨宮)

「宇宙」または「宇宙人」から見た「地球」の作品は何点かありましたが、この作品は、とにかく分かりやすくて絵がきれいです。宇宙人のくつろぐ星と、後ろの方で戦いに明け暮れる〝小さな星・地球〟との対比が良いですね。(おかもと)

よくあるアイディアですが、信じがたい戦争が起きてしまった今、凄まじく説得力があって胸が痛い。ほんとに宇宙人に笑われてるかも。絵も丁寧ですごく上手。(くさか)


 兵庫県 案山子 さん

 選評

公共交通で子どもが泣きだし、異様な緊張感と早く出ていけという雰囲気が生まれることがある。赤子から元気な泣き声を奪うことのない世界でありたい。誰もが通ってきた道を咎めることなく、その未来を絶つことがないよう。子どもが子どもらしくあることができるのも、「平和」のひとつの形だということを思い出させてくれるあたたかな作品。泣く赤子を笑顔で見守れる心の健康も大切にしたい。言葉に込められた思いと、くすみ調の色味のやさしさも沁みる。(おとど)

乗り合わせた人たちがみんな笑顔であかちゃんを見守っています。世の中も心の中も平和がいちばん。こちらも笑顔になりました。(雨宮)

赤ちゃんが泣くバスの車内、人々の温かい表情が素敵です。誰もが、赤ちゃんだった時には大声で泣いたはず。小さな子どもや子どもを連れた人々への、寛容さが問われている現代社会へのメッセージのように感じました。「平和」というテーマから、この作品を考えたセンスが素晴らしいです。(おかもと)

赤ちゃん連れのお母さんて気を使うんですよね。周りの寛容さが涙が出るほど嬉しいんですよね。未来の宝をみんなで育むって平和の根っこ。みんなでぐるっと囲んだ真ん中に言葉を書いたのも印象的です。(くさか)


 岡山県 齋藤 美波 さん

 選評

作者が学生であるということもあり、学生の今だからこそ描ける作品だと思った。画力も高く、細かな描写や陰影のつけ方も上手い。描かれたシーンはとても瑞々しいが、添えられた言葉はどこか達観しているようにも感じる。陰影や濃淡を白黒で表現しながら、差し色に赤色を持ってくることで、季節感やいのちのあたたかみにふれ、ほっとひとつ安心できる。これもどこか大人びていると感じる。子どもと大人の間を揺れ動く作者の繊細な感情が、「平和」を透過し、表現されていて良い。(おとど)

爽やかで瑞々しいイラストとまっすぐなメッセージがささりました。少女もとても魅力的です。こんな輝くような尊い時が争いによって失われることのないよう願います。(雨宮)

純粋で若さあふれる作品だと思います。ぜひ、この詩の気持ちを大切に歩んでいってください。イラストは、足をつけたときのヒンヤリ感が伝わってくるようで、水の描写が良いですね。(おかもと)

素直なメッセージがまっすぐ心に響きました。きれいな自然とまだ若い命は希望の象徴。作者の「私が平和をつくる」っていう意志まで感じました。澄んだ水を表す黒の使い方が素晴らしい。(くさか)

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